両極端を堪能する日

 

 

自転車で隣駅までいく道中、各家のバラがもりもり咲いているのが見える。バラとか、椿とか牡丹とか、ボリュームのでかい花は大声で咲いたよ!ってアピールしてくるのでかわいいね。季節はもう夏に足を踏み入れている。

 

昼飯を食べながら友人たちとビデオ通話をした。友人1人が先日出産し、画面越しに赤子を見せてもらう。

知り合いが出産し赤子を見るたび、本当に人間から人間が産まれるのだなと知識でなく事実として強く実感する。

 

今は快・不快を泣いたり笑ったりで表現するだけの赤子が、これから言葉を覚えていって己の快・不快を説明付けたり、言語交流の社会で生きていくんだなあ。記憶で生きていく、人間……。

一番身近な人の出産だったので、しかも10年来の友人なのもあり感慨深くなる。

 

通話が終わったあと、友人のオススメで黒沢清監督の「降霊」を観た。

ホラーは好きだが、文章で怖いと思わせるのが好きなので映像なんて怖いに決まってるじゃんとホラー映画を避けてきたが、これは驚かせるような演出でもなく、実際見える人にインタビューして心霊の演出をしているというので、かねてから私も気になっていた。

 

それでも怖いものは怖いので、部屋を締め切り隙間を無くし、壁にもたれ背後の安全、イヤホンでなくスピーカー大音量の万全な状態で視聴した。あと美味しいパンもお供に。

 

事前に友人は心霊というより生きている人間が怖いと言っていたがその通りで、観ながら大の字になり「人間、愚か……!」と言ってしまうような映画だった。

本人達は必死でそれが最善だと思いこんでいても、端から観ているとそこは押すなよというスイッチをことごとく押していき、主人公夫妻がお互い信頼している仲の良さの演技が良かったのも相まって、生きている人間の欲によってそこが崩壊していくのが切なかった。

 

心霊描写も良く心霊はいつでもあなたの側にというテイストなので、驚かせるより見ている人の息を「うっ」と詰まらせるのが良かった。実際見える人もこんな感覚なのだろうか。

 

1日で、生まれたての赤子のまっさらさと、知恵と欲望をつけた人間の愚かさの両極端を堪能する日となった。